ミドルマネジャーの役割が大きな転換期を迎えています。
生成AIの進化により、データの整理やロジック構築、資料作成といった「論理的な業務」はAIが圧倒的な質とスピードで肩代わりしてくれるようになりました。この流れは止められないでしょう。
その結果、前回のブログ(→ 前回のブログ記事へ)で書きましたが、これからのミドルマネジャーに求められる価値は、「戦略に対する人間の感覚(直感・違和感)」と「人と組織を動かす感情(熱量・共感)」をいかにマネジメントするかへとシフトしていくと思われます。
つまり、これからのマネジャーは、人の感覚・感情を扱い、チームのモチベーションを設計する高度な「感情労働」の専門職になると、私は見ています。
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ちょっと脇道:

そうなると、これまでのリーダーシップ研究で「不動の2軸」と言われていた「タスク軸」と「人間軸」でいうところの「人間軸」しか不要になる??
今後のリーダーシップ研究で出てくる知見が変わってくるかもしれませんね。
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しかし、現場に目を向けると、
この重要な役割変化を阻む可能性のある深刻な問題
が存在しています。
それは、どれほどマネジャー個人に「部下の感情に寄り添おう」「熱量を引き出そう」としても、
組織風土や仕組みがマネジャーの感情労働を邪魔し、彼/彼女らの精神をすり減らせてしまう
という問題です。
今回は、AI時代のマネジャーの活躍を殺してしまう「3つの毒組織風土」について論じ、経営陣や人事部門が今すぐ取り組むべき提言をまとめました。
これからの時代のマネジャーの活躍を阻む「3つの毒組織風土」
マネジャーが「感情のプロフェッショナル」として機能できない背景には、マネジャー個人の能力不足ではなく、組織風土を含めた構造的な要因があります。
どんな風土なのでしょうか。
有毒な組織風土① 「Why」のないタスク指示、無味な目標が降りてくるだけの風土
経営陣や上層部から「これをやれ」「数字を達成しろ」という「タスク」や「財務指標」だけが降りてくる組織風土です。
部下に目標を伝える立場であるマネジャー自身が「なぜこれをやるのか」に納得(意味づけ)できていないため、部下に伝える言葉が「冷たい正論」や「ノルマ」、感情を無視した「プロンプト」になってしまいます。
それをやることの意味や価値、自分にとってのメリットを示されない部下は当然受け身になり、指示通りにしか動きません。最悪の場合は、反発・抵抗し、それでも無理に動かそうとすれば摩擦が起き、マネジャーのストレスだけが増大します。
有毒な組織風土② ハラスメント過剰警戒による、ゆるゆる風土
昨今のハラスメント対応への過剰な恐怖から、マネジャーが部下の感情や本音に踏み込むことを極端に恐れる風土です。
「部下にハラスメントと言われたくない(通報されたくない)」、更には「部下に嫌われなくない」という思いから、マネジャーは優しいことしか言わなくなり、必要な厳しい指導や耳の痛いフィードバックを避けるようになります。
結果として、マネジャーは部下に気を遣い続ける「感情の奴隷」と化し、疲弊します。ひいては、部下の成長機会も奪われてしまいます。
有毒な組織風土③ 評価のブラックボックス化と「フィードバック不在」の風土
評価基準が曖昧で、結果だけが通知され、部下だけでなく、マネジャー自身も自分の上司から丁寧なフィードバックや承認を受けていない風土です。
部下に対する(必要な)厳しい指導を行うことが承認され、「自分は会社・上司から守られている」という感覚や、そういった指導や育成が正当に評価されているという感覚がマネジャーにない、そんな組織です。
マネジャー自身の「感情のゆとり」が欠落している状態で、部下の感情を受け止める余力などあるはずがなく、「事なかれ主義」へと走らざるを得なくなります。
経営・人事部門への3つの提言(今すぐ整えるべき土壌)
マネジャーを「感情労働ですり減る消耗品」にするのか、「組織の熱量・パッションを最大化するためのキーパーソン」にするのかは、経営と人事が作る仕組みにかかっています。
有毒な組織風土①への提言:ストーリーの透明化・センスメイキング
経営層は、財務的な目標だけでなく「なぜこのビジョン・戦略なのか」、「社会や顧客にどんな意味があるのか/どんな価値を提供があるのか」という点を、一連のストーリーとして、透明性高くマネジャーに手渡してください。
マネジャーが自分の言葉と感情を乗せて部下に語れるように、まずは経営・人事からマネジャーに対する「意味づけ(センスメイキング)」の対話を徹底することが第一歩です。
そのためには、ミッション・ビジョン・中期目標・戦略・バリュー・今期目標などといったマネジメントに関わる概念を一連のストーリーとして語れることが必須です。
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私の経験では、一連のストーリーとして語れるマネジャーはほぼいません。各概念をブツ切れで説明しているといった印象です。だからこそ、マネジャー個人に語らせる前に、まず経営陣がストーリーを言語化して見せることが不可欠なんです。
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有毒な組織風土②への提言:指導とハラスメントの境界明確化
部下の人格を否定するような言動を用いた指導は厳しく制限すべきですが、組織の掲げる高い業務基準を部下に求める「厳しい指導」は組織の成長に不可欠です。
会社として「どこまでが正当な指導なのか」のガイドラインを明確にし、勇気を持って現場で真摯に向き合ったマネジャーを、会社(人事)が断固として守り抜く防波堤になってください。
マネジャーが安心して、誠実をもって、厳しく部下に向き合える環境(風土)が必要です。
有毒な組織風土③への提言:伴走体制と安全弁の設置
今後ますます人の感情を扱うことになるであろうマネジャーの皆さんには、自分自身の感情を吐き出し、整理できる「安全弁」が必要です。
マネジャーに対する定期的な1on1ミーティングやフィードバックの機会を経営陣に義務付けるとともに、人事部門が相談窓口やマネジャー同士のピアサポート(横のつながり)の場を設計してください。

最も厳しい状況に置かれているのは課長です。部長以上が、課長を支援する姿勢と行動が必要です。
「マネジャーを一人で孤立させない仕組み」こそが、彼/彼女らの情熱やモチベーションを維持させます。
まとめ:マネジャーを孤立させるな。AI時代だからこそ「人間中心の組織設計」を
AIがどれほど進化しても、人に感情があり、ワクワク感や達成感、納得感によって動くという本質は変わりません。
だからこそ、現場で人間臭く感情を扱い、チームを駆動させるミドルマネジャー(特に課長)の価値はますます高まるでしょう。
会社や人事は、何かあると「ミドルマネジャーの能力向上が必須」と言いますが、なんでもかんでもミドルマネジャーに期待ないしは能力開発の機会を付与するような動きはもうやめましょう。
経営陣や人事部門が今やるべきは、彼/彼女らがプロフェッショナルとして誇りを持ち、「感情労働者」としての価値を発揮し続けられる、安全で情熱を持てる土壌を整えることなのです。

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