
皆さんはご存じでしょうか。「大課長」問題 。
以前から取り上げられている話題(※)なのですが、それは、
部長が課長のような仕事をしてしまっている
という点を指摘したものです。
※ リクルートワークス社が行った「部長の役割」に関する調査結果サイトへ
近年、管理職に関する話題は「罰ゲーム」と評されるものが殆どを占めている印象ですが、この「大課長」問題はさほど知られていません。ニュースバリューが低いからでしょうか・・・。
個人的には、「大課長」問題はもっと取り上げられるべきテーマだと思っています。なぜなら、「罰ゲーム」と言われるような状況になっているのは管理職の中でも課長であって、その上司である部長(や本部長)が本来の役割を担っていれば、課長をめぐる状況が改善すると考えるからです。
さて、この「大課長」問題を取り上げた書籍が2026年4月に発刊されています。
林宏昌 著『上司はリスクばかりを指摘する ~会社を潰す「大課長」問題~』朝日新書 2026年
著者は、経営戦略・人事戦略のコンサルタントさんです。世の部長の皆さん、特に大企業(中でもJTC)にお勤めの部長の皆さんには一読してもらいたい内容です。もちろん、経営や人事の皆さんにもお勧めします。
以下に、この本に書かれている内容をヒントに、「大課長」問題に関する私の意見を述べます。お付き合いいただけますと嬉しいです。
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中長期を考えられない/語れない、は「大課長」 → リスキリングにも影響
この本の中に限りませんが、「課長は短期、部長・本部長は中長期の視点・思考をもって仕事する」とされています。
※短期は1~2年、中長期は3年以上のこと。
著者独自の調査結果から、部長や本部長が(本来は課長の役割である)
「チームビルディング」や「業務推進」をやっており、中長期を見据えた仕事である「戦略策定」や「組織設計」はやっていない
とのことです。(22ページ)
なお、独自調査結果では、
世間の約半数の部長・本部長が「大課長」である
としています。
私見では、約半数(53.9%)というのは少し大げさなのではないかと感じるところもありますが、中長期を見据えた組織設計をやっていない部長は実際に多いと思います。
中期を見据えた組織設計を従業員に示すことで、彼・彼女らは「この組織に居続けようか/辞めようか」、居続けるとするなら「何を目指し、どうリスキリングするか」を考えられるようになります。
部長や本部長が短期的な視点・思考で仕事しているようでは、会社にとっても、管理職にとっても、従業員にとっても、近い遠くない将来に、これまで以上に厳しい現実が降りかかるでしょう。

「大課長」問題を放っておくと、えらいことになりますよ
切腹文化が「大課長」を育てている(115ページ)
業務に問題が起きたとき、多くの組織で最初に聞かれるのは「誰の責任なんだ」という質問ではないでしょうか。・・・(中略)・・・最大の論点はいつも、「誰のせいなのか」ということで、社内の議論は犯人探しに終始します。(115ページ)
「誰」の特定は終わると、次は、「どう責任を取らせるのか」という議論が出てきます。(116ページ)
皆さんの会社はいかがですか?
このような「犯人探し」をし、「失敗者を降格・異動させる」といった文化(著者は切腹文化と表現しています)を有した組織と、「大課長」はどのように関係するのでしょうか。
そんな文化を有した組織の部長(や本部長)は
■挑戦しない/リスクを避ける
■事が順調に進んでいるかどうかが気になり、マイクロマネジメントになる
ということです。組織に変革を促すような「戦略策定」や「組織設計」などは後回しです。まさに「大課長」。
加えて著者は、「切腹文化は組織を学びから遠ざける」と警鐘を鳴らしています。
うまくいかなかったときは学びにとって絶好の機会です。「どうしてうまくいかなかったのか」「どうすればうまくいくのか」といったことを考えることなく、誰かに責任を取らせることで事を幕引きしてしまうのです。

私の知っている範囲で、JTC(日本の伝統的企業)では、事の成功や失敗を問わず、マネジメントを振り返る文化、振り返りから学びを得る文化がほぼありませんね。だから、経営層にも管理職層にもマネジメントのプロみたいな人が育たず、結果として「大課長」を量産しているのではないかと思います。
役割定義が「大課長」問題を解消する
著者は、課長/部長・本部長の役割を定義し明示することを「大課長」問題の改善策として提言しています。確かに、課長や部長などの役割を明確に定義している会社は少数なのではないでしょうか。
他にも、課長から部長へのトランジションに伴うイベントを用意したほうが良いでしょう。
課長になるときは「管理職研修」をやっている会社は多くありますが、部長になるときは特段何もなく、部長に必要なマインドセットもスキルセットも理解しないまま、部長に担っている人が多いように思います。

日本の大企業(JTC)では、課長をキャリアの“上がり”と見立てていた風潮や、管理職(課長・部長)を一緒くたに扱い、プロフェッショナルな役割として扱わず、名誉職や年功職かのように扱ってきたような風潮がありますので、そういったことが「大課長」を養成する土台を作っていたのかもしれませんね。
まとめ
今回の記事では、林宏昌 著『上司はリスクばかりを指摘する ~会社を潰す「大課長」問題~』をヒントに、多くの企業で潜在化している「大課長」問題とその背景について考察しました。
「大課長」を生み出しているのは個人だけの問題ではなく、失敗を許容しない組織文化(切腹文化)や、部長職に対する適切な役割定義・移行支援(トランジション)の不足といった、組織構造上の課題に起因していると考えます。
- 部長(や本部長)の皆さんへ: 目先の業務推進だけでなく、3~5年先を見据えた「組織設計」や「中長期の戦略」に思考の枠組みをシフトしていきましょう。それが自部署の課長やメンバーを守り、成長させることにつながります。
- 経営・人事の皆さんへ: 部長を単なる「課長の上位互換」として扱うのをやめ、明確な役割定義と「部長向けマインドセット・スキルセット」を提供・サポートするような仕組みを整えることが急務です。
「大課長」問題を解消することは、管理職の「罰ゲーム化」を軽減し、組織として「挑戦」と「学び」を文化にするための重要施策だと考えます。
まずは自社の部長陣が本来の役割を果たせる環境になっているか、見つめ直すことから始めてみませんか?

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