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「キャリア上の成功=出世・昇進」という価値観が蔓延する会社のマネジャーは自己評価が高い説

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私はマネジメントに関して仮説を持っています。

それは、

「キャリア上の成功=出世・昇進すること」という価値観が根づいている会社のマネジャーは、自分のマネジメントを高く評価する

というものです。

マネジャーの自己評価が高くても、部下からの評価も高ければ、自己認識が正しくできていると言えそうですので、さほど問題にはならないでしょう。

厄介なのは、部下からの評価が低く、上司と部下の間の認識ギャップが大きい場合です。そんな場合、部下たちは日々モヤモヤしたり、イライラしたり、陰で愚痴ったりしている可能性が高いと思います。

応援団長
応援団長

マネジャーの皆さん、自分のマネジメントをどう評価しますか?部下からはどう評価されるでしょうか?自分を過剰評価していませんか?

今日は、そんな話をします。

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360度サーベイが勘違いマネジャーをあぶり出す

以前に勤めていた会社(人材コンサル)で、クライアント企業に360度サーベイ(別称:360度評価、多面観察)を提供し、その結果のフィードバックを支援していました。(→ 関連するサイトへ:パーソル総合研究所さん

「会社として、初めて360度サーベイを導入する」というケースを3社経験したのですが、その3社のサーベイ結果には共通点がありました。

それは、

マネジャーの自己評価が異常に高かった

のです。

3社のマネジャー(部長・課長)の皆さんは、サーベイの設問に対して、自己評価を満点(5点満点で5点)としていました。つまり、「自分はマネジメントがをちゃんやっている」と認識していたのです。

一方、部下側はその上司をどう見ていたのかと言いますと、上司に満点をつけている人はいませんでした。平均しますと、5点満点で3.5~3.9くらいの評価でした。中には2点台後半のマネジャーだっていました。

つまり、

マネジャーと部下の間の認識が(大きく)ズレていた

のです。

つまり、初めての360度サーベイにより、

勘違いマネジャー

の存在が明らかになったのです。しかも、結構な割合(30~40%)が勘違いマネジャーだったのです。

出世が全て。上司は神。そんな組織風土が、勘違いマネジャーを生む

上記3社(1つは銀行業界、1つは証券業界、もう1つは製造業)に共通していたのは、「出世・昇進すると権力を持つのは当たり前」といった価値観が組織内に埋め込まれているように感じられたという点です。

3社のうちの1社(A社)の人事部長は、サーベイを実施する前の打合せでこうおっしゃいました。

A社 人事部長
A社 人事部長

うちのマネジャーどうしは、ライバル関係にあるので、サーベイ結果を互いに見せ合うなんて絶対にしませんよ。結果が良かったとしたら、ライバルに手の内を明かすことになりますし、もし低評価だったら、ライバルに弱みを握られることになりますからね

と。

この発言以外にも、A社の従業員の何気ない「部下への所作」や「上司への所作」を見るにつけ、出世への意識の強さや、上司を絶対権力者として扱うような組織風土を強く感じていました。

私はA社にだけでなく、残りの2社にも似たような組織風土を感じていました。(ちなみに、3社ともJTCです)

自分は頭脳。部下は私の手足。

出世は成功者の証。上司を権力を持って当たり前。

そんな組織風土だと、

マネジャーになった私は偉いんだ。君たちより優れているんだ

といった、とんだ勘違いをしたまま、組織をマネジメントするんでしょうね。だから、360度サーベイをやると自分に満点をつけるんだろうと思います。

応援団長
応援団長

これが私の仮説です。

自信満々の勘違いマネジャーは、日常で部下のアイデアを真剣に聴くとか尊重するとか、部門運営のことを部下たちで話し合って決めさせるなんてことはしないでしょうね。

勘違いマネジャー
勘違いマネジャー

私の言うことを聞いて、やっておけばいいんだよ!余計なことをするな!

なんて言っている姿が目に浮かびます。

そして、もう一段の出世・昇進に向けて、上司に評価されたい/失敗をしたくないと考えているのではないでしょうか。

だから、

勘違いマネジャー
勘違いマネジャー

君のアイデアをやるのはいいが、失敗しても私は責任は取らないからな!それでもやるのか?

みたいなことを言うでしょう。部下の挑戦を応援し、自分が責任を取ってでもやらせるなんてことはしない。

こんなことだから、部下たちからの評価は当然低くなります。

転職の困難さが出世や昇進への興味を増大させていた

鈴木ら(2025)は、まんがを通しての「社畜」に関する研究で、

当時(1992年頃)の日本において転職は容易でなかった。このような「転職の不自由」下で人々は、自らをめぐる不都合を積極的に受け入れようとし、そこに社畜が生まれるという(143ページ)

として、

社畜は・・(中略)・・。そもそも転職は困難なので(会社から)離れようがないわけだが、なおかつその状況を積極的に受け入れて、そうした状況下での限定された幸せを追求しようとしている。自社内での昇進や噂話に興味を持つというのは、その追及の手段であると言える。(143ページ)

と述べています。

「社畜」という表現は少々強すぎるかもしれませんが、現在50歳以上の、新卒一括採用、終身雇用制度のもとで、ずっと同じ会社で過ごしてきた人たちからすれば、昇進や出世、それにまつわる噂話が会社に居続けるモチベーションだったのでしょうね。

もしかして、JTCに長く居るマネジャーたちって、部下に対して、

私が君をマネジャーにしてやる

というセリフを未だに言っているんでしょうかね?そうやって、部下を動機づけしているつもり??

参考図書:鈴木・北居・松本・上野山著『お仕事マンガの経営学』有斐閣 2025年

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最後に

360度サーベイの実施初年度に自己評価が異常に高かったマネジャーたちも、適切なフィードバックセッションを経験することで、1年後、2年後に同じサーベイをやってみると、上司と部下との間の評価ギャップが小さくなります。(上記3社ともそうでした)

それは、勘違いマネジャーに対する部下からの評価が1年間で爆上がりしたのではなく、マネジャーが自らを反省し、過大評価を控えるので、ギャップが小さくなるというメカニズムです。

組織に染みついている「出世して権力を持つのは当たり前」といった価値観や、「私は偉いんだ。君たちより優れているんだ」といった考えを組織から一掃することは簡単ではありません。

しかし、上司・部下間の認識ギャップが小さくなることは、組織としてはポジティブな成果で、組織を変革する大きな一歩だと思います。取組みを継続していけば、少しずつ「勘違いマネジャー」は減ってくるでしょう。

自分はマネジメントをちゃんとやっていると思っているマネジャーの皆さん、

■ 出世欲は強いほうですか?
■ 権力を振りかざすことは気持ちいいですか?
■ 自分は頭脳、部下は手足だと思っていませんか?
■ 部下は皆さんのことをどう見ているのでしょうね?

皆さんが「勘違いマネジャー」でないことを祈ります。

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