組織に属している人たちは、共通の目標を達成するために “組織” で仕事をしていますので、組織階層の上下間での目標連鎖をデザインする必要があります。この点はミドルマネジャーの重要な役割のひとつですね。
目標連鎖のことを「カスケードダウン(連なった小さな滝の意)」と言ったりするのですが、この「カスケードダウン」について、実際にはなかなかうまくいかない現状があります。

多くのミドルマネジャーが苦労されているのではないでしょうか。
今回のブログでは、組織目標の「カスケードダウン」を阻害する要因あれこれを書き連ねます。皆さんの組織ではどうでしょうか。
目標設定のタイミング問題
目標管理制度を取り入れている会社では、期初に上司・部下間で目標設定の面談を行いますね。

目標の「カスケードダウン」を成立させるためには、ミドルマネジャーは自らの上司との間で目標設定が完了していなければ、自分の部下との面談において目標の「カスケードダウン」ができませんよね。
ところが実際には、上司との面談が完了していないどころか、そもそもの上位方針がまだ出ていない中で、部下との間で目標設定面談を先行してやらなければならないケースがあります。
しかも、こういった事態が毎年恒例になっている組織もあるようです。

ふと考えます。目標が「カスケードダウン」されていない状態で設定した目標をもとに、メンバーを育成したり、評価したりしているのだとしたら、人事評価制度って一体なんなのかと。そんな育成や評価が経営にとってどれだけの意味や価値があるのか・・・。
現場からの不満はもとより、人事部門から「こんな制度運用はおかしい」という声があがっていないのだとしたら、私には、その会社は最初から経営そのものをあきらめているように見えます。
上位方針が示され、上位者とミドルマネジャーとの間で「カスケードダウン」が完了するのを待ってから、ミドルマネジャーとメンバーとの間で「カスケードダウン」することに何のマズさがあるのでしょうか。

上位方針のないまま、ミドルマネジャーとメンバーとの間の目標設定を先行してやらせることは、経営に資する行為なのでしょうかね?
上位方針が示されていない状態で、「〇〇までにメンバーと目標設定せよ」という業務指示は、ミドルマネジャーを苦しめるひとつの要素です。是非やめてほしいものです。
カスケードダウンに意識のない上位者問題

「カスケードダウン」っていうけど、目標は下位者が自分で考えて設定するもんでしょ?
とでも思っているのか、世の中には、部下の設定する目標に興味を持たないマネジャーがいます。ミドルマネジャーより上位層(本部長、事業部長)にそういった傾向の人が多いように思われます。
あくまで私見ですが。
本部長や事業部長といったクラスになると、最終成果や財務指標の達成にしか興味がなくなるのでしょうか。それをどうやって達成するかは「下々の考えること」とでも思っているのではないかと邪推してしまいます。
結果が全て、だと。しかも、残念な本部長・事業部長は、短期的な結果にしか目が行かない。

部長をマイクロマネジメントしないように注意する必要はありますが、各部長に目標設定を一任しているようでは、本部や事業部の目標は「カスケードダウン」されていない可能性が高いように思われます。
上位目標とつながっているかどうか怪しい目標をもとに、メンバーとの間で「カスケードダウン」しなければならないミドルマネジャーは大変です。メンバーに任せたい目標について、説得力のある説明ができません。
カスケードダウンに興味のない下位者問題
日本は海外と比較すると、会社や自分の仕事にエンゲージしている人が少ないと言われています。そんな状況ですので、会社の掲げる目標に進んでコミットし、自ら高い目標をすすんで掲げる人なんて稀有ですね。
ですので、メンバーに対して「あなたの好きなように目標を設定してください」と言ったすれば、
■自分のできる範囲のことを目標にする
■自分のやりたいことを目標にする
■評価に影響すると考え、低めに目標設定する
■どうすればいいのか困ってしまう
といったことになるのではないでしょうか。

課の目標って何でしたっけ?それを示してくだされば、身を粉にして頑張りますよー!
なんて健気なことを言う部下なんて、ほぼいませんね。
だからこそ、ミドルマネジャーは「カスケードダウン」された組織目標と「あなたに期待する目標・成果・役割」を示すことが必要です。
そのように説明しますと、ミドルマネジャーの方から、

こちらが一方的に目標を示しても部下のモチベーションが高まりませんよ。
と意見が出そうです。
確かに、自己決定理論では「自分で決めている」という欲求を満たすことの重要性が謳われていますし、目標設定理論では「自分の決めたこと」に対する責任感がパフォーマンスを高めると言われています。
上司が決めて下ろす、という行為は良くないように聞こえます。
ただ、昨今の風潮を見ていますと、メンバーは自ら進んで「組織の掲げる目標を意識して、挑戦的な目標を設定する」でしょうか。答えはNOでしょう。
つまり、メンバーに任せていては、組織目標の「カスケードダウン」は成立しないと思われます。

言い方は厳しいですが、メンバーも目標の「カスケードダウン」を阻害する要因になっていることがあります。
目標の「カスケードダウン」を成立させるためには、成果(最終アウトプット)に関する目標はミドルマネジャーが提示し、行動(=どうやって成果にたどり着くつもりか)に関する目標はメンバーに考えてもらってはどうでしょうか。
そうすれば、自己決定理論や目標設定理論の主張も満たすことになります。
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今日のまとめ
上記した阻害要因の影響もあり、多くの組織で目標の「カスケードダウン」はすっかり形骸化されている気がします。

メンバーは毎年、形骸化された目標に冷ややかな視線を送り、結局は「目標なんて達成してもしなくても評価は別軸で決まってしまう」といったことを学習しています。
このような風潮が、評価者であるミドルマネジャーの負荷をますます増大させています。
経営や人事に、人事評価制度を制度通りに運用する(しようとする)意欲がもっとあれば、仮に制度に多少の不備があっても、ミドルマネジャーのしんどさを多少減るのではないかと思います。

私も人事パーソンとして襟を正し、ミドルマネジャーの皆さんが少しでも負担軽減するように尽力します。
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参考情報:古巣のパーソル総合研究所が、目標管理に関する興味深い調査をやっています。(→ そのサイトへ)
世間一般に、人事評価ってどう行われているのか、目標管理にまつわる課題や課題解決のためのヒントは何か、ミドルマネジャーとして何ができるのかなど、いくつかの示唆が得られますよ。

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