初めてマネジャーになったばかりの頃は、色々な壁にぶつかります。そして悩み、戸惑いがちです。
前職でお世話になりました立教大学の中原先生のご著書『駆け出しマネジャーの成長論』(※)の中で、経験の浅いマネジャーの挑戦課題(=ぶつかる壁)が7つ挙げられています。以下の通りです。
①部下育成
②目標咀嚼
③政治交渉
④多様な人材活用
⑤意思決定
⑥マインド維持
⑦プレマネバランス
ここでは、1つひとつの挑戦課題についての説明はしませんが、「マネジャーになる」とは「もはやソロプレイヤーではない」ということですので、新しい役割に関する挑戦課題・適応課題が出てくることは当然と言えば当然です。
(※)中原淳 著『駆け出しマネジャーの成長論』中央公論新社 2021年
ちなみに、役割転換に関して、新任マネジャーはどのような困難にぶち当たり、それをどう克服していったのか、個別具体的な事例をもとに書いた本を最近読みました。管理職としてのキャリア形成をどうしていくのかも書かれており、おもしろかったです。
こちら↓
岩月・田中 著『Growth Manager 新任管理職のキャリア開発』千倉書房 2025年
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さて、マネジャーへの適応課題の克服に奮闘していると思われる新任マネジャーの皆さんは、マネジャー就任からの期間によって、マネジメント行動は異なるのでしょうか。
約10年前に取得した調査データをもとに、AIさんに改めて分析してもらいました。
少し古いデータですし、n数も60名足らずのあら~い分析結果ですが、興味深い結果が出ましたので、今回のブログで参考までに共有します。
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まずはマネジメント行動を因子分析した結果、以下の4つが抽出されました。
第1因子:組織内調整・ネットワーク(Internal Networking)
- 主な項目内容:他部署とのつながり、適切な人への相談、ネットワーク作り、方針の周知
- 特徴:組織内のリソースや人間関係をフル活用して仕事を動かすための行動
第2因子:変革・タスク遂行(Change & Task Execution)
- 主な項目内容:アイデア試行、アイデア実行、困難な課題への挑戦、計画策定
- 特徴:既存の枠組みの中で成果を出すだけでなく、新しい試みを実行に移すアクティブな行動
第3因子:メンバー配慮・信頼構築(Individual Support)
- 主な項目内容:メンバーの気持ち、ミスへの励まし、メンバーの立場で考える、相談処理
- 特徴:メンバー一人ひとりに寄り添い、心理的な安全性を高める対人的なサポート行動
第4因子:プロフェッショナルな自己提示(Expert Presence)
- 主な項目:内容:デキる上司に見える振る舞い、信念があるように見える振る舞い、言行一致
- 特徴:管理職としての正統性や一貫性を周囲に示す行動
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次に、それらを管理職就任からの期間別を3つ(半年未満、半年〜1年、1年以上)に分け、上記4つの因子の平均値を比較してみました。
こんな結果でした。
| 因子名 | 半年未満 | 半年〜1年 | 1年以上 | 傾向と有意性 |
| 組織内調整・ネットワーク | 3.32 | 3.58 | 4.05 | 大幅上昇 (p < .01**) |
| 変革・タスク遂行 | 3.15 | 3.30 | 3.62 | 上昇 (p < .05*) |
| メンバー配慮・信頼構築 | 3.88 | 3.95 | 4.02 | 安定(初期から高い) |
| プロフェッショナルな自己提示 | 3.55 | 3.62 | 3.68 | ほぼ横ばい |
そして、AIさんはこんなふうに整理してくれました。
第1フェーズ:就任半年未満
- 特徴:「メンバー配慮・信頼構築」が先行
- 解釈:就任直後は、まずメンバーとの心理的距離を縮めることに注力。一方で、マネジャーとしてのネットワークや変革行動はまだ抑制的。「まずは現場に馴染む」、守りの時期。
第2フェーズ:就任半年〜1年
- 特徴:全体的にマネジメント行動のスコアは微増。しかし、大きな変化はまだ見られない
- 解釈::マネジャーとしての日常業務(ルーティン)をこなすことで精一杯な時期。既存のやり方を踏襲している段階か。
第3フェーズ:就任1年以上
- 特徴:「調整・ネットワーク」と「変革行動」が急上昇
- 解釈:自部署だけでなく、他部署との利害調整ができるようになり、それを基盤として、ようやく自らのアイデアを形にするための動きが出てくる
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分析結果を見ますと、皆さんもきっと「まあ、そうだろうな」という感想なのではないでしょうか。
まずはメンバーとの関係構築ですね。いきなり、自分のアイデアを試したり、前任者を否定するような取組をしたりはしませんよね。そして、部下に挑戦的な課題をもちかけるようなこともしそうにないですね。
約1年をかけて、社内にネットワークを構築し、取り巻く状況を理解したうえで、自分のやりたいことをやり始めたり、部下に高い目標に挑戦することを促したりするのでしょう。
ただ、この状態って、変革を推進すべき部門にとっては大きな課題になりそうなことではないでしょうか。
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今は多くの会社で「挑戦」をキーワードとしています。
会社風土として、挑戦することが日常になっていれば問題ないのですが、そうでない会社(=挑戦志向の低い会社)では、就任1年以上経過したマネジャーでさえ、メンバーに挑戦的な目標を持たせることに苦労していると思います。ですから、就任直後のマネジャーの場合、それをやるとメンバーからの反発・抵抗は必須でしょうね。
そうなると、その職場の挑戦風土への変革は1年延期され、競争優位性や付加価値創出力をどんどん失われていく可能性があります。
挑戦する風土に乏しい会社に勤務されている、現時点で就任1年以上が経過しているマネジャーの皆さん、メンバーに「挑戦」を促す働きかけを徹底し、それを職場風土にしていかないといけませんね。
そうすれば、後任マネジャーへ引き継いだあとの1年間が「挑戦モラトリアム」にならずに済みます。
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もう1つ。
プレイングマネジャーがプレイヤーとしての活動に傾倒しすぎると、「組織内調整・ネットワーク」や「変革・タスク遂行」といったマネジメント行動はできないので、組織変革なんて全く起こらないでしょうね。良くて現状維持??
ご注意ください!

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