今回は、退職の意思を示してきたメンバー、中でも転職を考えているメンバーへの対応に関するお話です。
転職に関する動向ですが、総務省統計局の資料によりますと、ここ10年間を見ますと転職者数はほぼ横ばいのようです。一方で、転職等希望者(「副業をしたい」という人も含む)の割合は2021年頃からジワリと増えているようです。組織にとって、遠心力が働いていますね。中でも、25~34歳の方々、正規職員(正社員)における上昇傾向は他と比べて顕著のようです(→ 総務省の関連サイトへ)。
皆さんの周りにいる25~34歳の方々も、日常的に転職サイトを覗いていたり、人材紹介会社から良い話が来れば話を聴いてみたり、転職を考えていないところに“良さげな話”が舞い込んできて、急に転職意欲が増したりするかも知れません。
そして、全く予想していないタイミングで、

あのー、会社を辞めたいんですけど・・・。
と言ってくるしれません。さて、そんなとき、皆さんならどう反応しますか?引き留めますか?

今回のブログでは、メンバーから「転職を考えている」と言われたときの対応について考えてみたいと思います。
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「辞めたい」と言われると動揺し、どう対応していいのか分からない
これまでにお会いした複数のマネジャーさんからこんな言葉を聞くことがあります。

1on1ミーティングで、メンバーに将来やりたいことを聞いて、もし「転職を考えている」なんて言われたらどうしようかと思うんです。だから、キャリアに関する話をこちらから持ち掛けるのに躊躇しています。
そんなとき、私は質問します。

〇〇さんご自身は、転職の経験はありますか?
答えは、ほぼ100%、「ないです」と返ってきます。
ご自身に転職の経験がないので、転職したい人の気持ちや考え、転職を考える際に何に悩むのか、どんな決意で上司に意思を申し出るのかといったあたりについて、想像がつかないのかもしれません。ですから、

どう対応していいのか・・・・・
と思ってしまうのは理解できます。そんなマネジャーの皆さんにおすすめの本があります。
中原・小林・パーソル総研 著『働くみんなの必修講義 転職学』KADOKAWA 2021年
この本には、「離職~転職~新たな組織への定着」という、転職にまつわる一連のプロセスが科学的に書かれています。自らに転職経験がなくても、転職を考える人の心理や行動、転職活動、その苦労などが多少は理解できますので、「転職を考えている」と言ってきたメンバーに対して、参考になるコメントやアドバイスができるかもしれません。
人材の流動化が進む可能性のあるこれからの時代。転職経験のないマネジャーにとって、きっと参考になりますよ。
まずい対応
ご自身は新卒で今の会社に入り、成果をあげ、昇進し、マネジャーの座をつかんでいるのであれば、その会社では「成功している」と見ることもできます。ですので、これまでに会社を辞めることなど真剣に考えたことがないのかもしれません。
所属する会社に誇りを持ち、更に自分自身に自信がある場合、メンバーが「転職を考えています」と言ってきたら、

なんで辞めるの?もったいない。こんないい会社ないよ。早まるな。考え直せ。
なんて言ってしまうかもしません。
一般的に、転職を考えている旨を申し出ている時点で、本人はあれこれと熟慮し、上司への申し出を決意し、その場に臨んでいますので、「考え直せ」はあまり効かないと思われます。
他に、以下のようなことを言うマネジャーはさすがに少ないと思いますが、居なくもないです。

今辞められたら困る。せめて、1年待ってくれ。急に代わりを見つけられないし。
メンバーからすれば、「組織の成果のために、君の1年間を私にくれないか」と言われているようにも聞こえなくもないです。“君の代わり”という表現は、メンバーを道具のようにみている風にも聞こえます。更には、マネジャーの自己保身と受け取られる可能性もあるでしょう。
愚の骨頂は、以下のようなことを言うマネジャーです。

君なんて、よそに行っても通用しないよ。この会社だから雇ってもらえているんだから。
こんな言葉を聞くと、メンバーの転職意欲が増して、辞める意思を後押しする効果になりそうです。
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では、どうすれば良いのでしょうか。
安斎(2025)によれば、
個人のキャリアにおいて「会社を辞める」という選択は、きわめて大きな主体的決断であり、本人の内面を深く知り得る絶好のチャンス
と言っています。更に、
あくまでも相手がどのような考えで退職を決意したのかに耳を傾けて、相手のキャリアにとってベストな選択を一緒に探る姿勢を貫きましょう
とマネジャーの皆さんへ提言しています。 参考書籍:安斎勇樹『冒険する組織につくりかた』テオリア(2025年)
真剣に、自分のキャリアに向き合っているからこそ出てくる1つの意思が転職ですので、「キャリア自律」している証とも言えます。
最近では、アルムナイ(→ 用語の説明 HRプロさんのサイトへ)といって、いったん辞めた会社への“出戻り”が当たり前になりつつあります。更には、辞めた人が将来の取引相手や協働相手になることも考えられ、どこで再び縁が生まれるか分かりません。
辞める意思を申し出てきたメンバーに対して、その意思を尊重し、決断に至った経緯を丁寧に聴くこと。そのうえで、本人のキャリア形成上、今の会社に居続けることで得られるベネフィットがあるのであればそれを伝え、「だから居続けてほしい」と気持ちをぶつけてみることです。
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私の経験上、転職経験あるマネジャーは、メンバーが転職を申し出てきたとき、さほど動揺しませんね。むしろ興味をもって、色々と話を聴いている印象です。そして、その意思を尊重し、応援します。むしろ、あっさりしすぎているくらいです。
キャリアは「本人の自己選択」が基本ですので、マネジャー都合にならないようにすることが肝です。

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