トップダウン型の組織は嫌われる

うちはトップダウンの強い会社なので・・・
という表現を聞くことがあります。「うちの会社は上意下達で・・・」という表現も同じような意味で使われます。“トップダウン”も、“上意下達”も、情報の方向が一方向(上層から下層へ、上司から部下へ)ということですね。
そして、それらの言葉は、ほぼ100%、ネガティブな意味を持って使われていて、発言者に詳しく話を聞くと以下のようなおっしゃいます。
▲ うちの会社のマネジメント層は、従業員の意見には耳を貸さない(指示命令を一方的に下ろすだけ)
▲ うちの会社のマネジメント層は、威張っている/権威主義的だ
▲ うちの会社のマネジメント層は、従業員を自分の持ち物(道具、駒)だと思っている
▲ うちの会社のマネジメント層が出す方針や指示はズレている。まるで現場をわかっていない

従業員側から見れば、トップダウンの強い組織はネガティブなものなのでしょうね。
では、トップダウンの強い組織にポジティブな面はないのでしょうか。ネット検索してみますと、以下のようなことが挙げられていました。
〇 意思決定が速い
〇 組織の方向性(ベクトル)を統一しやすい
〇 リーダーシップ(責任の所在)が明確
〇 リソース配分が最適化されやすい

組織側からみて、ポジティブな面が多い(都合がいい)という印象です。
ボトムアップ型の組織は従業員の理想?
一方、ボトムアップの強い組織はいかがでしょうか。

うちはボトムアップの強い会社なんですー!
と自慢げに言う人はそんなに見かけません。特に、JTC(伝統的な日本企業)では稀有なのではないでしょうか。
ボトムアップの強い組織の良い面は、
・従業員が主体的/能動的で、上位者に対して遠慮なく意見やアイデアを言う
・上位者が下位者の意見やアイデアを聞いてくれる/汲んでくれる/採用してくれる
といったところでしょうから、従業員は自己効力感や有能感を得られ、総じてエンゲージメントが高い気がします。

では、ボトムアップの強い組織にネガティブな面はあるのでしょうか。ネット検索してみますと、
▲ 意思決定に時間がかかる
▲ 全体最適が難しい
▲ 従業員の能力に左右される
▲ 部門間連携がとりづらい
▲ 責任の所在が不明確になる
といったことが挙げられています。

これらは、大きな組織側からみてのものという印象です。
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どんな組織が理想なのか
ここまでの内容を、以下のようなマトリックスにしてみました。

トップダウンの強い組織のポジティブ面と、ボトムアップの強い組織のポジティブ面が同時に発揮されると、短期的にも中長期的にもパフォーマンスの高い組織ができます。
つまり、組織の目的・目標が上から下まで一貫・連動しており、役割分担もできている。そして、従業員はその目的・目標を実現するために主体的・能動的に考え、行動することができている。そんな組織のイメージです。

理想ですね。
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上記マトリックスで「▲」の組織にも、少しは良い面 がありそうです。
例えば、「トップダウンが強く、ボトムアップは弱い」という組織ですが、軍隊のようなイメージですね。そのような組織であれば、短期的には成果を創出できそうです。
ただし、従業員は徐々に嫌気が差してきたり、疲弊したりして、成果の良い状態は長くは続かないでしょう。
「トップダウンが弱く、ボトムアップは強い」組織はどうでしょうか。従業員はイキイキと働き、職場も明るいでしょう。こういった組織は、規模が小さければ、意思決定も速く、成果も出せるでしょう。
しかし、組織が徐々に大きくなってくると、統制や調整が必要になってきます。そうなると、様々な意見を整理したり、まとめたりするのが大変になったり、各所で摩擦が増え、意思決定の速度が落ちたり、アイデアに尖りがなくなってきたりして、少しずつ「トップダウンが強く、ボトムアップの弱い」組織に変容していく可能性を感じます。

つまり、「▲」の組織は、短期的には良い面もあるが、中長期的に問題が噴出してきそうです。
超・最悪な組織
「✕」 の組織など、そもそも世の中に存在しないと思いますが、「✕」よりもタチの悪い組織があります。それは、トップダウンも中途半端、ボトムアップも中途半端な組織です。

例えば、
トップダウンが半端で、
✕ 上層から出される方針や指示が下層へ行くごとに薄まる
✕ 上層から出される方針や指示が、あるところ(階層)で途切れる
同時に、
ボトムアップが半端で、
✕ 上層から出される方針や指示を無視した意見やアイデアを出している
✕ 上層から出される方針や指示を無視して、自らの目標設定をしている
✕ 上層から出される方針や指示を無視した活動をしている
という、2つの半端さが同時に起こっている組織です。それを有り体に言えば、
目標管理(MBO)が全く機能していない組織
ということになります。

短期的にも、中長期的にも、確実に成果の出ない状態になっているにも関わらず、ここに気づかない/目を向けないで、1on1ミーティングやコーチングのような、上っ面な施策をマネジャーに提供している組織がなんと多いことか・・・。
まとめ
組織の持続的な成長を考えるのであれば、目標管理制度の本質を見つめ直し、全員で実践することです。

これって、もう何十年も前から言われていることです。少し前に流行ったOKRも本質は同じではないでしょうか。
トップダウンの良い面と、ボトムアップの良い面の両立。皆さんの組織はどんな状態ですか?

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