会社都合の人事異動は、管理職の説明責任能力を奪う
皆さんの会社では、会社都合での人事異動が当たり前ですか?
異動を含む人事権を会社が保持することの注意点として、書籍 石山恒貴 著『人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」』光文社新書 2025年 の中にこんな文章がありました。

管理職の説明責任が醸成されないという問題である。人事異動に本人同意が必要ないことで、管理職にとっては異動の理由や意義を本人に伝える努力が不要になってしまう。また遅い選抜で長期にわたって査定がなされるということは、一つひとつの短期間での査定の重みがそれほどでもないことを意味する。そのため、管理職は特定の人事評価期間における査定の理由を詳しく本人に伝えるという姿勢に欠けるようになってしまう。(252ページ)

会社都合の人事異動が当たり前の会社にお勤めの管理職の皆さん、この文章を読んでどう思いますか?
私はこの文章を読んで、
■ なぜこんなにもメンバーへの評価をフィードバックしないマネジャーが多いのか
■ 「うちの会社は大体✕年でローテーションだから」というのが異動の理由って酷いなぁ
といった、ずっと胸の中にあったモヤモヤが少し晴れた気がしました。「なるほど~。メンバーにちゃんと説明しなくても済んでしまう仕組みが日本企業には備わっているのだな」と。
では、皆さんの会社で人事制度が変わり、会社の持つ人事権の一部を手放す・・・具体的には、会社都合の人事異動がなくなったら何は起こるのでしょうか。つまり、公募型による異動となり、仕事内容や勤務地などを社員自ら選択可能になったら、組織を運営するマネジャーにとってどのような不都合が生じるでしょうか。
例えば、
▲ 優秀な人材がよそへ出ていってしまう
▲ 突然、異動決定の連絡がくるため、組織運営の目論見が外れてしまう
▲ どこにも行き場のない、パフォーマンスの低い人たちは組織に残り続けるかもしれない
といったことが挙げられます。

自社で公募制を導入しただけで、人材の流動性が急激に増すわけではありませんが、世間の人材流動性も関係しますので、組織運営上で上記のような不都合が発生する可能性には気を付けておきたいところです。目の前にいるメンバーがこのまま居続けてくれるとは限らないという前提を持たないといけません。
ですので、マネジャーとしては、メンバーとのコミュニケーションにより、
〇 今の仕事をどう見ているのか(面白みを感じているか、やりがいはあるか)
〇 必要な支援はあるのか、困りごとはないか
〇 将来をいかに展望しているのか
などを常に聴いておかないといけません。では、メンバーの話を色々と聴いてあげていればOKかと言えばNGです。
上記の石山先生がおっしゃるように、「説明責任」を果たす必要があります。では、マネジャーはメンバーに何を説明する責任があるのか。
それは、
□ 会社や事業の現状、目指す方向はどうなっているのか
□ この部署の現状、目指す方向、どんな職場を目指すのか、そのために何をするのか
□ この部署で働く人たちに期待する役割・能力、能力を発揮してもらうための施策
□ あなたに何を期待しているのか、活躍に向けてどんな支援をするつもりか
□ あなたの現状をどう見ているのか、期待通りか期待外れか
□ あなたの強み、それを活かせそうな舞台や場面はどこか
といったことです。

会社が持っていた人事権の一部を手放せば、メンバーは自己選択でどこへでも行けます。もし皆さんが、目の前のメンバーと今後も一緒に働き続けたいのであれば、上記のようなことをメンバーへ丁寧に説明し、勧誘・惹きつけ・引き留めのようなことがしっかりと行う必要があるということです。
パフォーマンスがずっと出ないメンバーに対しては、本人のためにも「意識や行動を本気で変える必要があること」や「次の働き場所を考える必要があること」を本人に説明しなければなりません。そのままの状態が続けば、本人も組織も幸せにはなれませんので。
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エンゲージメントにも説明責任が関係?
もしも会社都合による人事異動が無くなったとしたら、ということでここまで書いてきましたが、「うちの会社は未だに会社都合の人事異動が中心だから説明責任はこれまで通りに緩くていいんじゃない?」というマネジャーの皆さん、説明責任は別の観点でも必要そうです。
石山先生は著書にこのように書かかれています。

管理職の説明責任の欠如は、エンゲージメントの低下につながる。国際比較で日本のエンゲージメントが低い理由は、管理職とそのチームメンバーの対話が足りず、1人ひとりの強みを活かせていないところにあるという指摘があった。(253ページ)
対話が足らない、メンバーの強みを活かせていない・・・・・。それらが説明責任とどう関係するのか。
対話とはお互いに意見を伝え合い、その違いを表出させるコミュニケーションです。管理職に、「メンバーの強み」に関する説明不足があるとすれば、
□ あなたには「●●●」という強みがある
□ あなたの持つ強みの発揮状況を・・・・・。それは期待通り or 期待外れ
□ あなたの持つ強みを活かせる役割は__________だ
といったことをメンバーに説明していないということなのでしょうか。その影響で、メンバーは自らの強みに気づかないまま、会社や上司から言われた仕事をただこなしているだけ・・・。その結果、エンゲージメントが低い・・・。こういう図式なのでしょうか。
これは私の仮説ですが、あながち外れていない気がします。
メンバーのエンゲージメントを何とかしたいと思うのでしたら、メンバーの強みに関する説明責任を果たしているかどうか、内省してみましょう!
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今日は、管理職の説明責任に関するお話でした。
キャリア入社者も当たり前になってきていますし、日本人以外の従業員も増えてきています。阿吽の呼吸、以心伝心が通用しない状況が以前よりも確実に生まれつつあります。

人事異動に関する制度がどうこうにかかわらず、管理職の説明責任は果たしていかなければなりませんね。

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