前回のブログで、リーダーシップやコミュニケーション、エンゲージメントといった抽象度の高い言葉(Big Word)を扱うときの注意点を書きました(→ 前回のブログへ)。それらの言葉は、見聞きしたときに何となく理解したつもりになるのですが、実はよくわかっていないという事態を引き起こす危険性のある言葉です。
今日はそのBig Wordのひとつである“リーダーシップ”に関する記事です。
“リーダーシップ”という言葉の検索状況をGoole トレンドでみますと、いつの時代にも安定して検索されているようですが、ミドルマネジャーの皆さんはいかがでしょうか。“リーダーシップ”について検索したり、調べたりしたことはおありでしょうか?


私は、初めて管理職になるとき(約20年前)、不安を感じ、手当たり次第にリーダーシップに関する書籍を読みまくりました。中でも、文庫ではありますが、『リーダーシップ入門』は当時の私には衝撃的なもので、その後の私のキャリアを方向付けることとなりましたし、多くの知見も得られました。
その著者である金井先生は“リーダーシップ”や“キャリア”といった領域における大家なのですが、その門下生であられる鈴木竜太先生(神戸大学大学院 経営学研究科 教授)の新著を今回拝読しました。
鈴木竜太 著『人を動かし、成果を生み出す リーダーシップの科学』ダイヤモンド社 2026年
鈴木先生は、現場で働く組織リーダーがリーダーシップ論をいかに実践すればよいかという点を意識して書かれたのではないかと想像しながら読みました。面白かったです。

以下に、この本の内容を起点に、ミドルマネジャーの皆さんに役立つと思う記事を3点書きます。
1.リーダーシップを考えるには、まず成果を起点にする
2.リーダーシップを発揮する前に想像力を用いる
3.自分へのフィードバックの受け取り方
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リーダーシップを考えるには、まず成果を起点にする
鈴木先生は、
良きリーダーシップを振るうにはリーダーとしての打ち手からではなく、成果から考える必要がある。なぜなら、目指すべき成果が決まらなければ、そのために必要なフォロワーの行動も決まらず、必要なフォロワーの行動が決まらなければ、当然ながらそれを促すリーダーの振る舞いも決まらないはずだからである。(252ページ)
とおっしゃています。

読めば当たり前のことを書いてあるように思いますが、これはとても重要な観点だと思います。このような言説のリーダーシップ本は少ない気がします。多くの本が、「ビジョンを示せ」とか「メンバーをモチベートせよ」とかいったリーダーシップ行動が書かれているだけです。(そうすれば、成果は出ると。)

成果につながるフォロワーの行動を踏まえ、自らのリーダーシップ行動を考えること。ここがポイントです。
現実の世界はどうでしょうか。世間の多くのリーダー(マネジャー)を見渡しますと、マネジメントの基本ができている人は、そのような思考をもっているのではないでしょうか。
つまり、マネジメントの基本ができていれば、上図の①から③へ順に思考しているでしょう。
1ー1.(課の目標を達成するために)部下Aさんに期待する成果を決める ・・・ 成果
1-2.Aさんが期待成果をあげるためには、本人がどのような行動を取ると良いかを想像する ・・・ フォロワーの行動
2.自分とAさんとの関係性を考える
3.Aさんにその行動を取らせるために、どのようにすれば良いかを考える ・・・ リーダーシップ行動
皆さんの思考(順)はいかがでしょうか。
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リーダーシップを発揮する前に想像力を用いる
259ページに、
リーダーシップを振るった場合、メンバーがどのように反応するかを想像することが重要
と書かれています。より具体的には、
①解像度高く
②奥行きをもって(最初の反応だけでなく、中長期的な影響も想像する)
③幅広く(目の前のメンバーの反応だけでなく、周囲などへの影響も想像する)
想像することが必要だそうです。
例えば、組織のリーダーであるあなたが期の始めにメンバーへ組織ビジョンを語る場面を想像してみてください(思い出してみてください)。

あなたがメンバーに期待する成果は当然「今期の目標達成」ですね。各メンバーが目標達成に向けて行動してもらうために、あなたは組織のリーダーして「ビジョンを語り、メンバーをモチベート」しているのではないでしょうか。
その際、あなたがビジョンを語る前に、メンバーの反応を ①解像度高く ②奥行きをもって 想像しましょうということです。

あなたが語るビジョンをメンバーが聞いたときに、解像度高く、同じ絵姿をメンバーは脳裏に描けているでしょうか。
ビジョンは中長期のこと(=奥行きのあること)、想像上の未来のことを言っています。同じ絵姿をメンバーに描いてもらえない限り、ビジョンが意味や価値を持ちません。つまり、メンバーをモチベートできません。
ビジョンに限らず、想像力を以てしてリーダーシップ行動を考えないと、メンバーからは「なんとなくは分かりますけど・・・」とか「目の前のことが忙しくてそれどころじゃありませんよ」とか、鈍い反応や抵抗しか得られない事態が起こります。
現在そうなっていませんか?想像力を駆使しましょう。
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自分へのフィードバックの受取り方
組織のリーダーにとってだけでなく、全ての人にとって、周囲からフィードバックをもらうことは成長に繋がると言われていますが、そのフィードバックに関することで、鈴木先生はこのようにおっしゃっています。
リーダーシップ開発の観点から考えると、フィードバックで得られる自身の評価を良くすることが、良いリーダシップにつながるとは限らない。なぜなら、それはその評価者から見たリーダーシップだからである(305ページ)
フォロワーによってリーダーに期待することや良きリーダーシップのあり方は異なる。それらすべてに対応することにより、好感度は上がるかもしれないが、本当に効果的なリーダーシップの開発になっているとは限らない(305ページ)
私も、他者からのフィードバックの受取り方には注意が必要だと考えています。
前職(外部コンサル)では、360度サーベイを取扱い、様々なクライアント先でフィードバックセッションを担当していました。そして、マネジャーの皆さんの能力開発支援をやってきましたが、その頃から、参加者の皆さんに以下のような注意喚起をしておりました。

メンバーにとっては嫌に感じることでも、やらないといけないこと/やるべきことがありますよ
例えば、メンバー側は、一般的に「目標設定を厳密に行うこと」や「定期的に進捗管理されること」を嫌がります。ですので、360度サーベイで、うちのマネジャーは「目標設定を厳密にやってくれてない」とか「定期的に進捗管理をしてもらってない」と評価していたとしても、マネジャーに対して、「目標設定を厳密にしてくれ!」とか「定期的に進捗管理してくれ!」とは決して思っていません。むしろ、今のままでいいと思っているかもしれません。
360度サーベイだけでなく、周囲からのフィードバック情報を受け取るときの正しい考えは、成果を出し続けられる組織をつくるマネジャーになるために情報をどう受け取り解釈するかです。
成果を出し続けられる組織づくりのためには、時として、部下に厳しく当たる必要があるかもしれません。煙たがられる存在にならないといけないかもしれません。ゴマをするような態度をとらないといけないかもしれません。しかも、メンバー一律にそのような接し方をするのではなく、メンバーに応じた対応が求められます。
この記事の上部に書きましたが、自らのリーダーシップ行動を開発する際は成果起点で想像することです。成果は短期のものだけでなく、中長期のものも含めてです。

メンバーからの評判を高めることを目的にするのではなく、短期・中長期の成果を出し続けることを目的に、自らのリーダーシップ行動を考えていきましょう!
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今日は鈴木先生の新著をヒントに、以下の3点について述べてきました。お読みいただき、ありがとうございました。
1.リーダーシップを考えるには、まず成果を起点にする
2.リーダーシップを発揮する前に想像力を用いる
3.自分へのフィードバックの受け取り方
鈴木竜太 著『人を動かし、成果を生み出す リーダーシップの科学』ダイヤモンド社 2026年

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