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読書感想(25‐9)学びをやめない生き方入門

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マネジャーとしましては、人や組織のマネジメントに関する能力は高めたいところですよね。

そんなとき、組織行動論(※)には役立つヒントがたくさんあります。中でも、マネジャーの大きな関心事である「モチベーション」に関する内容(研究成果)は豊富にあり、有名な理論もいくつかあります。二要因理論(衛生要因・動機づけ要因)はその中の1つです。

(※)組織行動論とは(日本の人事部さんのサイトへ)

手塚ら(2023)は、著書の中で二要因理論を以下のように図示しています。

参考書籍:手塚 編著、浅川・安東・岡田・吉田 著『この1冊ですべてわかる 新版 マネジメントの基本』日本実業出版社 2023年

図の最右列には、部下のモチベーションを高めたり、維持したりするために必要なこと(手段)が書かれています。

内容を読みますと、マネジャー個人の考えで実践できることもあれば、「〇〇システム」と書かれているもののように、会社・組織として用意する制度や仕組みもあるようです。

図を見ますと、「動機づけ要因」の1つに「能力向上や自己成長」とあります。

人は、これまでできなかったことができるようになったり、分からなかったことが理解できるようになったりすると、やる気、モチベーションが高まりますよね。マネジャーの皆さんにも、そんな経験があるかと思います。

部下を動機づけることを第一義にしているかどうかは分かりませんが、部下の能力向上や成長を支援すること、つまり人材育成はマネジャーにとって大切な役割だと認識されているマネジャーは多いです。同時に、それがなかなか難しいと感じておられるマネジャーの皆さんも多いのではないでしょうか。

難しさを感じる理由の1つに「部下に成長への意欲や学ぶ意欲がない」ということはありませんか?あるとすれば、その状況を何とかしたいですよね。

そんな思いをお持ちの方々に紹介したい本があります。以下の本です。

中原淳・パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所 著『学びをやめない生き方入門』テオリア/フォレスト出版 2025年

そもそも日本のビジネスパーソンには、学びに対するバイアス(偏見)があるそうです。部下に限らず、マネジャー自身もそのバイアスを持っているのかもしれません。

この本には、そのあたりのことを含め、様々なことがデータに基づいて書かれています。寂しい現実、大変な状況だけが書かれているわけではなく、本の中には解決策(自分は学んでいないと思っている人たちへの提言)も書かれています。

今日は、この本の感想を、ミドルマネジャーの皆さんに関連させて書いていきます。

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「学ばない」にはバイアスが影響している

学びに関する調査・分析で、学びに関する「7つのバイアス」が見えてきたそうです。7つのバイアスとは、以下の通りです。  ※1つひとつの詳細は本をお読みください

①「新人」バイアス ・・・ 「学び=若い人・新人のもの」
②「学校」バイアス ・・・ 「学ぶなら学校や教育機関で」
③「現場」バイアス ・・・ 「座額はムダ、経験こそすべて」
④「地頭」バイアス ・・・ 「知能がないと学べない」
⑤「自身の欠如」バイアス ・・・ 「自分は学びに向いていない」
⑥「現状維持」バイアス ・・・ 「いまのままで十分」
⑦「タイパ」バイアス ・・・ 「できるだけ効率よく学ぶべき」

そして、「週1時間以上、学びの時間を確保している人」と「まったく学びの時間を取っていない人」とを比較してみますと、後者(学んでいない人)のほうが、全てのバイアスにおいて高い数値を示している(=バイアスが強い)そうです。

応援団長
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マネジャーの皆さん、部下の方々を想起していただき、成長意欲のなさそうな人や学んでいそうにない人がいれば、その方のバイアスを想像してみてください。該当しそうなものがありませんか?

ちなみに、20~30代だと地頭バイアスが強く、50~60代になると新人バイアスや現状維持バイアスが強くなるなど、年齢によって、バイアスが変わっていくようです。

では、どうしてバイアスが生じるのか。

どうやら、学校と職場に原因があるそうです。(学校のことは今回さておき、)学ばない職場には5つの共通点があるとのこと。それは、

1.長時間労働
2.異動の多さ
3.職務のあいまいさ
4.とにかく行動主義
5.業績必達主義

だそうです。これらがバイアスを育むらしいです。1番目(=長時間労働)は、近年の働き方改革で減ってきてはいますけど、2~5番目は今でもありそうです。

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そして、もう一つ重要なことが書かれていました。それは、

「学ばない上司」のもとでは「学ばない部下」が育つ

という分析結果です。学びに関するバイアスを加速させる要因が「上司」だそうです。

応援団長
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私は、直感的に「まあそうだろうなぁ」と思いました

特に、マイクロマネジメントは最悪だそうです。(マイクロマネジメント:上司が仕事の進め方を細かく指示し、進捗や内容の報告を強要するようなマネジメントスタイルのこと)

その逆もあるそうです。

上司自身の学び行動が、部下の学びに好影響を与える

とのこと。マネジャーの皆さんの学び行動が、部下の学習意欲・学習時間・学習したことの共有に好影響を与えるらしいのです。

応援団長
応援団長

マネジャーの皆さん、学び続けていらっしゃいますか?目先の業績をあげることだけに囚われていませんか?

この本によれば、学んでいるマネジャーは4割弱だそうです。そして、その半数が学んだことを自分の職場に共有していないそうです。つまり、コソ勉状態になっているので、部下は上司の学びを知らないということになりますね。

ということは、上司の学びに感化され、自分も学ぼうと思う環境にいる部下は2割くらいということになります。

さて、学べていないマネジャーの皆さん、何を学びましょうか。

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学びの仲間を作ること

より良く学んでいる大人には「5つの行動」が見られたそうです。詳細は本を手に取って読んでいただきたいのですが、その中の1つに「共習する」と書かれています。共に学習するということです。

本にも書かれていますが、孤立した学び(独りで学ぶこと)は継続しづらいですね。

応援団長
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どうしても自分に甘くなりがちです・・・

共に学ぶ仲間がいれば、以下のような4つの主要な効果があるそうです。

1.真似し合い ・・・ 熟練者のスキルを観察して学ぶ
2.教え合い ・・・ 他者に伝えることで、自らの理解が深まる
3.創り合い ・・・ 知識を共有し、新しい価値を生み出す
4.高め合い ・・・ 仲間の存在が、モチベーションを引き上げる

確かに、学び仲間とのやりとりには良いことがたくさんありますね。私は実体験があり、本当にそう思います。

さて、マネジャーの皆さん、学び仲間はいらっしゃいますか?あるいは、学び仲間になりそうな人たちはいらっしゃいますか?

まとめ

マネジャーの皆さん、

■この先も幸せであるために、そして、組織で活躍するために何を学びましょうか?
■何を学ぶかを決めたら、共に学ぶ仲間をどうやって作りましょうか?

もし、マネジメント職として更に自分を高めていきたいとするならば、このブログの最初に書きました組織行動論を含めて、アカデミアの体系的な学びを得ることをお勧めします(これは「現場バイアス」を払しょくすることになります)。

本の中で、「お出かけ経験」をお勧めしています。日常のルーティンや慣れ親しんだ環境から一歩踏み出し、新たな場所・人・学びに触れる機会に出ることです。

アカデミアの体系的な学びを得るために、大学院に通うまでせずとも、経営やマネジメントに関して、

〇社内外を問わず、他組織のマネジャーとの接点を探し、話をしてみる
〇外部のマネジメントに関するセミナーを受けてみる(交流の場があると理想)
〇地域の集まり(自治会、町内会)に参加し、まとめ役を観察してみる(or やってみる)

などを経験することで、バイアスが刺激され、学びの灯が点るかもしれません。その学びを続けるためには仲間がいると良さそうですので、あまり肩ひじ張らず、ゆるく学んでいきましょう(本の中で、ゆる~く学ぶことも大事と推奨しています)。

応援団長
応援団長

私はいま、自分の勤め先で、マネジャーの皆さんどうしの繋がりと学び合いを促進すべく、取組みをやっております。これが、マネジャーの皆さんの将来に活躍につながることを祈ってます。

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