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ビジョン浸透という言葉への違和感。浸透させれば、それでいいんですかね?

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皆さん(の会社で)は、

ビジョン浸透

という表現を使っていますか?(ネット検索しますと、結構な数のサイトが引っかかります)

デジタル大辞泉によりますと、“浸透”とは、

とあります。

マネジメント(経営)として真に狙っている「ビジョン浸透」している状態は、上記定義の通り、ビジョンそのものが組織内に行きわたっていれば(認知されていれば)OKということなのでしょうか?

そんなわけ、ありませんね。

「ビジョン浸透」に限らず、言葉選びは大切です。経営や人事の発する言葉の使い方が下手なため、本来の意図とは異なる状況を生んでいる現状を目にします。

「ビジョン浸透」もその一例かと思います。今日はそんな話をします。

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そもそも「ビジョン」をめぐるリアルはこんな感じでしょ

ビジョンは、

組織が目指すべき理想の姿

とされています。(→「日本の人事部」さんのサイトより

ミドルマネジャーの皆さんは、組織のビジョンをメンバーに示したり、語ったりすることがあると思いますが、自分の示したビジョンがメンバーに理解・共感されている自信はありますか?

マネジャーの語るビジョンをめぐるリアルは以下のような状況だとみています。

いかがでしょうか。思い当たる節はありませんか?残念ながら、世間の多くのミドルマネジャーが複数項目に該当するのではないでしょうか。

そうなっている原因ですが、ミドルマネジャーにあるのではなく、実は、トップマネジメントがビジョンに関して無知・無能というケースが殆どではないかと思います。(それが綿々と受け継がれている)

ビジョンの“浸透”うんぬんを語る前に、こんな状況では、ビジョンが本来持っている機能を果たすことなど期待はできません。

応援団長
応援団長

ビジョンを日常のマネジメントへ正しく組み込もうと思うのであれば、上記1~6の点を振り返り、整備したほうがいいです。1~6に該当するビジョンは無価値です。

浸透させることが目的なんですかい?

仮にビジョンがきちんと描けているとして、冒頭に書きましたが、それを組織内に “浸透” させれば、それでOKなのでしょうか。

浸透 = 組織内に広く行きわたらせる = 全メンバーに認知させる

ということですから、例えば、毎朝ビジョンをメンバーに唱和させ続ければ、認知どころか、暗記させることも可能で、“浸透”はさせられるのではないですかね。

でも、ビジョンってそんな扱いをするものではないですね。ビジョンは、

組織として何としても実現したいもの/実現しなきゃいけないもの

なはずですよね。

ビジョンは成り行きで実現できる姿ではありません(成り行きで実現できそうなビジョンは、そもそもビジョンとは言えません)。つまり、全メンバーに認知させさえすれば実現できるような、生易しいレベルの姿ではないはずです。

ですので、ビジョン実現のためには、その道筋(=戦略)を考え、実践していくことが必ず必要です。

しかしながら現実は、以下のような状況だと思いますよ。

7.ビジョンはあるが、それを実現するための道筋(=戦略)を描いていない
8.ビジョンと道筋(=戦略)が繋がっていない(ように、部下には見える)
9.道筋(=戦略)を各メンバーの目標や計画に落とし込んでいない
10.目先の出来事に揺さぶられ、各メンバーとの間で道筋の進捗を振り返ることはほぼない

いかがでしょうか。上記7~10の状況だと、ビジョンをきちんと描いたとしても「絵に描いた餅」になること必至です。

皆さんの組織のメンバーがかなり優秀で、ビジョンが“浸透”さえすれば、ビジョン実現に向けて、各メンバーが自主的に考え、メンバーどうしで役割を分担し、しっかり動いてくれる・・・そんなことは夢物語です。

応援団長
応援団長

ですので、“ビジョン浸透”では不十分なのです。

マネジメントの役割は、組織に「ビジョンを浸透させる」ことではなく、組織に「ビジョンとそれを実現させるための戦略を理解・遂行させる」ことです。

反論者
反論者

そんなことは百も承知だ。ただ、表現が長くなることを避けるために、仕方なく「ビジョン浸透」と表現しているだけだ!

と言い訳されるかもしれませんが、その結果、大事なことが従業員に全く理解されないのではあれば、そんな表現を発信することは無意味どころか、日常のマネジメントのノイズになり、発信しないほうがマシかもしれません。

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今回の結論です。経営や人事は、

ビジョン浸透という表現はしないこと

です。ビジョンを浸透させることが目的かのように経営や人事の施策がなされているのであれば、無価値どころか有害です。

ミドルマネジャーがやるべきことは、ビジョンとその実現のための道筋(=戦略)はセットでメンバーに示し、我々はそこに向けて日々仕事を遂行しているのだということを理解させ、(できれば共感を得て、)行動を促すことです。

応援団長
応援団長

言葉選びはマネジメント職者にとって大事な要素です。曖昧な言葉や、解釈を人に委ねるような言葉はメンバーに対して使わないことです。

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