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1on1ミーティングに関する調査結果から考える。現場は「1on1ミーティング」と聞くと耳に栓をします

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部下をマネジメントする際、すっかりお馴染みのコミュニケーション手段になった感のある「1on1ミーティング」ですが、ミドルマネジャーの皆さん、部下と1on1ミーティングをやっていますか?

2017年頃から人事関連の人たちの間では話題になっていた1on1ミーティングは、コロナ禍(2020年)で注目度が増しました。2022年のリクルートマネジメントソリューションズさんの調査では約7割の企業に導入されており、大手企業ほど導入率が高いようです。(→ 関連記事へ

2025年2月、私の古巣であるパーソル総研さんが、部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する調査結果を公開しています。(→ 当該の公開サイトへ

この調査は、単に「1on1ミーティング」ではなく、わざわざ “部下の成長支援を目的とした1on1ミーティング” としている点がポイントと感じます。

それは、1on1ミーティングの実態として、中身は業務の進捗管理のやりとりになっていることが多く、それでは多くの企業が1on1ミーティングを導入した意図とはズレていますので、「部下の成長支援」という本来の意図を明確にして調査されたのではないかと推察しました。 (パーソル総研さん、間違っていたらすみません)

調査結果を読んで、私が引っかかったのは以下の2点に対してでした。

1.1on1を良くするためには、「人材育成」を重視する風土をつくることが重要だと、半数以上の回答者が言っている点
2.1on1を低頻度(4~6か月に1回)でやっていると回答している人たちのこと

今日はこの2点について持論を述べます。よろしければ、お付き合いください。

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他に選択肢がないから選んでいるだけなのでは?

調査結果では、1on1を良くするためには、「人材育成」を重視する風土をつくることが重要だと、部下側の半数以上(55.3%)の人が言っているようですが、

応援団長
応援団長

私はこの設問と回答結果に大した意味を感じませんでした。

なぜなら、「人材育成を重視する風土があれば、私が上司にやってもらっている1on1ミーティングの質が高まります」なんてことを期待している人(部下)などいないと思いますし、「人材育成を重視する風土があれば、私は自分の成長のために懸命に努力します」なんて言う人はもっといないと思われるからです。

どんな風土であろうと、主体的に学ぶ人は自ら経験を積み、学び、成長していきます。私の周囲の人たちを見ているとそう思います。一方で、給料が上がる/下がるなどの報酬や罰がないと学ばない人がいます。

残念ながら、日本のビジネスパーソンは学ばない人が大半なのではないでしょうか。それを示すデータは世の中に溢れかえっていますし(→ 関連するプレジデントオンラインさんの記事へ)、読書すらしない人って周囲にたくさんいますから・・・。

応援団長
応援団長

俺はこれまで読書なんてしたことがない!、と自慢げに話すトップマネジメントも知っています。わざわざ言うことでもないと思いますけど・・・・・。

私の穿った見方かもしれませんが、アンケートの回答選択肢で他に選ぶものがないから、「「人材育成」を重視する風土をつくることが重要だ」を仕方なく選んだのではないかと思います。

また、同じ設問(1on1ミーティングを良くするためには?)に対して、部下側の49.5%が「上司の主な役割として「部下の育成」を位置づける」と回答しています。

応援団長
応援団長

ミドルマネジャーの皆さん、この意見をどう思いますか?

私には部下側の勝手な言い分に思えます。他の項目を見ると、いずれも部下にとって他責なもの(ex. 上司のコーチングスキルをあげる研修 など)です。つまり、1on1ミーティングの質を高める責任は自分以外(特に上司)にあると言っているようにみえます。

マネジャーの負担だけ増加させ、部下側にとっては優しい(ゆるい)風潮がこんなところにも出ているのではないかと考えてしまいます。

1on1ミーティングに関する研修受講率が部下側のほうが低いと調査結果にありましたが、確かにもっと部下側にも「成長のために努力をしなさい」とか「1on1ミーティングは自分のために活用するものだ!」とかいう点を教えたほうがいいですね。

最後に。部下の29.7%が「面談の効果が感じられない」と回答していますが、効果がないことの原因は自分にもあるんだということを自覚させる必要もあるのではないでしょうか。

ホントに、4~6か月に一度しか部下の成長支援をしないのか?

調査結果で、1on1ミーティングを低頻度(4~6か月に1回)にしかやってもらっていないというと回答している部下側の人たち(833名/1,500名、55.3%)に聞いてみたいことがあります。

それは、

応援団長
応援団長

部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングを4~6か月間に1度しかやってもらっていないということでしょうか?あるいは、単に1on1ミーティングというものを4~6か月間に1度しかやってもらっていないということでしょうか?

ということです。

今回の調査では、部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングの実態を明らかにしているはずですが、質問の仕方(というより、回答者の質問の読み方)によって、調査者が本当に聞きたいことが聞けていないのでは?と感じました。

今回、パーソル総研さんが定義されている(部下の成長支援を目的とした)1on1の要素、

1on1の要素
・上司が、部下の仕事のモチベーションをあげようと励ます
・上司が、部下の悩みを丁寧に聴き、共感的に理解しようとする
・上司は、部下が自分で考えを深めることができるような質問や助言を行う
・上司は、部下が経験をもとに自分なりのノウハウを見つけられるよう発問や助言を行う

という点を踏まえて、回答者が答えているのかどうか怪しい・・・。単に、中身はさておき、1on1ミーティングという場の頻度に関して回答しているだけなのではないかと。

ついでに言うと、今回のような調査で、部下側に、1on1ミーティング以外の場で上記要素を上司にやってもらっているかどうかを聞いてほしかったです。

といいますのは、1on1ミーティングに関する実態調査で、1on1ミーティングをやっていない上司にその理由を尋ねると、必ずと言っていいほど、

マネジャー
マネジャー

1on1ミーティングなんてやらなくても、普段から部下と会話しているから

ということを言います。

それが事実であれば、何の問題ありません。1on1ミーティングは手段ですから、部下の成長支援を目的とするコミュニケーションが日常の中でできているのであればいいわけで、わざわざ1on1ミーティングという場をセットする必要はありません。

しかしながら、部下の成長支援を目的とした接し方、ましてや、今回の調査で定義している「経験学習を促すような接し方」となれば、多くの上司はできていないはずです。(一方的な助言、指示命令になっている可能性大)

私の仮説ですが、設問を本来の意図通りに捉えて回答していれば、1on1ミーティングの頻度に関する結果はもっと悪い数値になったと思いますし、そうすることで、部下の成長支援の実態がより分かったのではないかと思います。

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今日は、パーソル総研さんの1on1ミーティングに関する調査結果をもとに意見を述べました。

現場は人事の発するキャッチ-な言葉にアレルギー反応を示すことがあります。

ですので、「1on1ミーティング」という言葉を使わずに、「部下の経験学習支援」とかいった地味な言葉を使って施策を推進するほうが、マネジャーの皆さんにとって受け入れやすいのかもしれません。

部下側にとっても、1on1ミーティングという名称が、会社が用意した形式的で強制的な面談機会という印象を作っているのかもしれません。

応援団長
応援団長

上司にとって大事なことは、1on1ミーティングをやることではなく、部下の成長や変化を支援し、パフォーマンス向上を図ることです。

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