以前のブログに書いたのですが、リーダーシップに関する様々な文献を読むと、多くの内容に ”ビジョン” が出てきます。リーダーは「ビジョンを示す」と。(該当するブログ)
世間で行われているマネジャー研修でも、ビジョンに関して触れることは多いと思われますので、マネジャーの皆さんも「ビジョンを示すことは大切だ」と思っている人はソコソコいるでしょう。
さて、そのビジョンについて、部下の側はどう思っているのでしょうか。
マネジャーの皆さんが若かった頃、会社や上司に対してこんなことを思ったことはありませんでしたか。
- うちの会社にはビジョンがないよなぁ
- マネジャーの口からビジョンなんて聞いたことはない(数字の話ばかり・・・)

コロナ禍も加わり、ますます先の見通しが立てづらい時代とあってか、働く人にとって、組織のビジョンを示すことの重要性は増してきている気がします。
うちの会社(パーソル総合研究所)の調査結果でもそのあたりのことが明らかになっています。例えば・・・
近年、人事マターというより経営マターと言ってもいいくらいの重要性を持っている ”キャリア自律” に関して、組織のビジョンを日ごろから語られていることが社員のキャリア自律の促進に影響を与えている。(関連調査の記事)
リモートワーク下における、新入社員のオンボーディング(入社後の組織への適応支援)に関して、上司がビジョンや方向性を示すことが、新入社員の業務能力向上や、組織コミットメント(組織への愛着)に有効。(関連調査の記事)
このように、マネジャーとして、組織のビジョンを示すことはますます大切な役割になっています。
そこで、今回はビジョンに関しての記事を書きます。
もうすでに、私はメンバーにビジョンを示している!

というマネジャーの皆さんにも確認してもらいたいことがあります。それは・・・
”ビジョン” というものをきちんと理解しているか?
ビジョンと混同して扱われるものとして、理念(経営理念、企業理念、創業理念)がある。理念はミッションと言ったり、最近ではパーパスという言葉も使われる。 ※実にややこしい!!
皆さんの会社にも、ビジョンと理念はありますよね。(額縁に入って、オフィスの壁に飾られている?)

さて、皆さんはビジョンと理念の違いを語れますか。
ビジョンは「未来像」、理念は「存在意義」を示している。
理念は「我々は何のために存在しているか」を説明しています。誰に対して・どんな役立ちをするために我々はこの世にいるのか、です。
会社とは社会の公器と言われます。
社会の一部として存在し続けているということは、会社設立以来、ずっと「理念」通りに活動してきているはずです。だから、社会から“生かされてる”、“必要とされている”のです。
働く人にとっても、自分たちの会社が社会や顧客の役に立っているというのは誇らしいものですよね。
ちなみに、2000年頃、当時の松下電器産業(現パナソニック)のトップであった中村邦夫さんが「理念以外は破壊する」と発言されていたのが象徴的で、理念とは創業以来変わらないものである。
対して、ビジョンは「目指す将来の姿」を表現しています。目指す将来の姿なので、当たり前ですが、今と同じ姿ではありません。(裏を返せば、今はその姿ではないということ)
理念と異なり、ビジョンはトップが交代したり、時代環境が変われば変わり得ます(変えなければならないとも言えます)。
このように、ビジョンと理念は別物です。その意味を理解し、区別して扱いたいですね。
目標とも異なる
次に、ビジョンは「目標」とも異なるという点を理解することも重要です。
目標は、多くの場合、いわゆる数字、財務数値です。売上、利益、シェア、ROE、・・・。
会社を持続可能なものにするためには、適正な数字(利益)を計上し続けることは命題です。ですので、毎期毎期の数値目標の達成は重要なことです。
注意したいには、数値目標をビジョンだと勘違いし、部下に伝えている状況です。なぜか。
それは・・・
数字で人はワクワクしないから。
こう言いますと、営業部門の人からすると、反論があるかもしれません。
私も以前は営業職でしたので、目標数字を達成したときの喜びを経験したことがあります。しかしそれは、働く喜びや仕事自体の楽しさからくるものではなく、目標をクリアした達成感・安堵感や、上司や周囲からの承認に対する反応でした。

更に私見を言えば、目標達成しているときはまだ良いんです。調子の良いとき、人は数字肯定論者・数字至上主義者になりがちです。
目標未達成だった場合はどうでしょうか。上司から怒られたり、未達理由を詰められたりすると、「オレは数字のために働いているんじゃない!」とか「この上司はオレを数字マシーンとしか思っていない」と反論したくなり、一転して数字否定論者になったりします。
数字ってそんなものだと、個人的には思っています。数字が前面に出過ぎると、様々なハレーション、コンフリクトが様々な場所で生じます。(ただし、組織にとって目標達成が重要なことには間違いない)
これまでの文献で、ビジョンは人々を動機づけると言っています。目標(数字)はどうでしょうか。「やらねばならない」と人を駆り立てはしても、「やりたい」というワクワクするような動機づけを与える効果は薄いですね。
ですから、目標(数字)とビジョンも区別して扱うことが大切です。
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今日はビジョンについて、理念とも目標とも異なるものであるという点を書きました。
組織の束ねる要素としては、もう一つ「価値観(バリュー)」も押さえておきたいが、それは改めて書くこととします。次回は、ビジョンに関して更に理解が深まる情報を提供します。
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