マネジャーであれば、マネジメントに関連して「SMART」という言葉を一度は聞かれたことがあると思います。
目標設定における5つのポイント
ですね。
改めて、「SMART」とは
S = Specific(目標は具体的であること)
M = Measurable(目標は測定可能であること)
A = Achievable(目標は達成可能であること)
R = Related to または Relevant または Reasonable(目標は関連性があること)
T = Time bound(目標には期限があること)
のことです。
組織の掲げる目標を達成するために、そして部下のモチベーションを高め、彼らの成長を支援するためにも、とても大切な要素が「SMART」には入っています。
にもかかわらず、私の経験上、この「SMART」は、現場では「永年未使用概念」になっています。

つまり、多くの場合、こんな感じに目標設定になっているのではないでしょうか。
Not Specific(何をすれば良いのか、具体的な言動になっていない)
Not Measurable(何をもって達成できたか判断できない)
Not Achievable(達成不可能なレベルの目標設定、または達成するまでの道のりが不明)
Not Relevant(上位目標と繋がっていない)
Not Time bound(期限が設定されていない)

実際に部下と合意した目標を見直してみてください。残念な目標設定になっていませんか。
どうして現場では「SMART」が意識されない/活用されないのでしょうか。
それは、目標設定を「SMART」にすると、上司側にも部下側にも不都合が発生するからです。
今回のブログでは、不都合とは何かなど、目標設定にまつわる悪習を整理し、どうすれば良いのかといった話をしていきます。
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部下側が避けたがる「目標の「SMART」化」
まず、目標設定が「SMART」でないとどうなるかを考えてみましょう。
以下のような悪循環が生まれます。と言いますか、この悪循環が染みついている組織があります。

まず、目標が「SMART」でないと評価しづらくなります。何をもって達成できたのかがハッキリしませんから当然ですね。
そうなると、曖昧なフィードバック、納得感のない評価を部下に提示することとなり、部下側は不平不満やモヤモヤ感を抱きます。それが毎期繰り返されますと、「この組織では、やってもやらなくても評価は変わらない」というパラダイムが生まれ、「だったら、やらないほうがマシ」という組織風土が生まれます。
結果として、目標設定を「SMART」化することは「やり損を生むだけ」と考えるようになります。

これが、部下側から見たときの「SMART」の不都合な点です。
当然ながら、こんな組織では努力や挑戦は忌避されます。組織の持続的な成長・発展を考えますと非常にマズい状態ですね。
上司側がビビっている「目標の「SMART」化」
評価の難しさを口にするマネジャーは多いですね。
その状況を改善・打開するために「SMART」はとても有益なのですが、マネジャーの中に、目標の「SMART」化に懸念を示す人たちがいます。
話を聞いてみると、その人たちは、「SMART」の「S(具体化)」に関して、以下のようなフローを想像しているようです。

目標を具体的に設定すると、部下は目標に関連すること以外のことをやらなくなるのではないか。そうなれば、組織として仕事が回らなくなり、業績に悪影響を及ぼすのではなかろうかと・・・。

これが、上司側が考える「SMART」の不都合な点です。
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こうしてみますと、部下側は目標を「SMART」にされたくないと思っていますし、上司側も目標は「SMART」にしない方が良いと思っていますので、相思相愛な関係が成立しています。

どうりで、「SMART」が浸透しないわけです。
SMARTにしませんか?
以下のような循環が理想です。

努力や挑戦を回避し続ければ、その組織の将来は真っ暗です。
そんな状態を打破するためには、「成果を出した人、頑張っている人、挑戦している人を評価し、そうでない人は評価しない」。そういった当たり前のことを当たり前にやることが、人材と組織の持続的な成長につながるんだということをマネジャーが肝に銘じることです。
肝に銘じたら、メンバーと自分の目標設定をSMARTに準じて行いましょう。
「うちの部署だけが目標の「SMART」化を徹底したら、どうしてうちだけが?とメンバーから不満が生まれる」と思うからも知れませんが、不満を恐れて何もしなければ、部下にとっても、組織にとっても、ますます機会損失することになります。(財務指標には現れませんけど)
目標設定の「SMART」化は、マネジメントの質が大きく変える可能性を持っています。
上記したマネジャーの懸念、「目標を具体的に設定することで、自分の目標以外のことをやらなくなる」ことを防ぎたければ、組織への貢献に関する目標を組み込んでおけばいいのではないでしょうか。

さらに言えば、「やってもやらなくても評価は同じ」という状況が解消されれば、会社や職場、仕事へのエンゲージメントが高まり、自分の目標以外のことでも進んで取り組んでくれるようになると考えられます。
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余談:間接部門(バックオフィス)は目標が定量化できないから・・・
Measurable(測定可能)に関して、間接部門のマネジャーがよく口にするコメントです。

営業部門と違って、うちの部門は目標を定量化しづらいんですよ~
本当でしょうか。
Q(品質)C(コスト)D(納期)の面で、業務の生産性を測定することは可能ですし、どうしても Measurable が困難であっても、Specific(具体的)な目標設定は必ずできます。
簡単な注意点として、以下のような言葉を使用しないことです。(裏返せば、使いがちワードです)
~を図る
~を推進する
~を支援する
~に貢献する
~を運営する
~に対応する
~を調整する

間接部門だからということで、頭ごなしに「SMARTな目標設定は無理!」と決めつけているマネジャーが多い気がします。頭を柔らかくしましょう。必ずできます。

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