学生から見放されるJTC
先日、ある大学生がこんなことを私に言ってきました。
「JTCって、終わってますね」

JTCとは Japanese Traditional Company の略で、文字通り「伝統的な日本の企業」ということですね。AIによると、こんな感じの特徴をもった企業のようです。
昭和体質:上意下達、硬直的な組織、終身雇用、年功序列など、昭和時代に根付いた企業文化が色濃く残っている企業
変化を嫌う:外部からの刺激や新しいアイデアを拒否し、変化を恐れる傾向がある
縦割り組織:部署間の連携が弱く、情報伝達が滞りがちである
忖度:上司や上層部の意見に忖度し、真実を隠して報告する
内向き:外部との連携が少なく、自社内での問題解決を優先する

これを読むと、JTCとはネガティブな意味を持つワードですね。
なお、その学生のお父さんは旧財閥系メーカーに勤務しておられるようで、ある日の食卓にて、お父さんから会社について以下のような話を聞いたそうです。
*会社の業績がずっと伸びない
*賞与が大幅に減額た
*この先も不透明
*そんな状況下でも経営陣は全く変わろうとしない(or/and 変われない)
*JTCはどこでもそんな状況だろう
個人的には「賞与のことまで子供に言うのかー」と思ったりしましたが、その結果、学生は「JTCは終わってる」と思ったようです。今のところ、JTな香りがする会社を就職先の選択肢には入れないとも言っていました。
私は、全てのJTCが「終わっている」とは思っていませんが、学生のコメントを真っ向から否定することはできません。

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物事の結果には何らかの原因がある
上記学生のお父さんの「会社の業績が伸びない」という「結果」には、何らかの「原因」があるはずです。その中には予測不能なものもありますが、振り返ってみると、予測可能、かつ自社でコントロール可能な原因も結構あったのではないでしょうか。
会社の業績が良くない(伸びない)原因を探る能力がなかったり、探れたとしても解決策を実行する能力がなかったりして、悪い状態を繰り返したり、どんどん悪化させているケースは、上記学生のお父さんの会社に限らず、世の中のJTCにはありそうです。
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会社を運営するうえで重要なことにも関わらず、本来の意図とは間違った運用がずっと繰り返されている人事施策があります。それは「目標管理」です。
上記しましたJTCの特徴に沿って、JTCの中での目標管理の運用実態を見てみると、こんな感じではないでしょうか。
昭和体質:上意下達が影響し、目標管理の持つ本来の狙い(Self-control)がまるで理解されていない
変化を嫌う:変化を恐れる傾向が影響し、従業員は安パイな目標設定になる(=挑戦しない)
縦割り組織:部署間のやりとりは組織長を通じてしかできず、個人の主体的な動きが限定される
忖度:上司や上層部の意見に忖度し、上位方針に疑問や不明点、違和感があっても聞かない/聞けない
内向き:外部とのコミュニケーション機会が少なく、自社内の常識や慣習で物事を判断し、解決しようとする
いかがでしょうか。

深刻な状況に陥っているJTCはこんな感じだと思います。
こんな組織、確かに終わってますね。
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坪谷(2023)よりますと、目標管理を導入している組織の27%が「うまくいっていない」のようです。「どちらとも言えない」という回答が41%ありますが、「うまくいっている」と言い切れない点から察するに、この41%も「うまくいっていない」と捉えてもいい気がします。
参考書籍:坪谷邦生 著『図解 目標管理入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2023年)
上記数字はJTCに限定した調査から出たものではありませんが、私の経験上、多くのJTCで目標管理はまともに機能していません。毎年、形骸的な運用をしています。

そうなっているのには、目標管理制度の主管部門であるJTC人事部門の姿勢に問題があるでしょうし、運用側のJTC組織責任者にも問題があるでしょうし、JTC従業員の意識にも問題があるでしょう。
例えば、以下のようなことです。
JTC人事部門の姿勢の問題:
1.プロフェッショナルな意識が弱く、事業部門や組織責任者にモノが言えない
→ 本来の目的や正しいやりかたが徹底されていないことを指摘することに及び腰
2.形式主義で、制度の運用に関するガイドやマニュアルを配布し、注意喚起すればOKという姿勢
JTC組織責任者の姿勢の問題:
1.目標管理を評価のため(だけ)の制度だと思っている ※社内での評価をやたら気にする
2.上意下達が強く、部下自身に考えさせることがない ※上司の役割を勘違いしている
3.思考が硬直的で、毎年同じような目標しか立てられない
JTC従業員の姿勢の問題:
1.評価が悪くなるので、挑戦的な目標を設定したくないと思っている ※給料のためだけに働く人たちばかり
2.上位方針やチームに興味がない(自分のタスクにしか興味がない)
3.「社外」を意識した思考や行動がない ※内向き志向、キャリア依存

JTCの治療は困難を極めますね。
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件の学生のように、「JTCなんかに就職するかぁ!」と思っている人が少しでも減るように、JTCは急いで、本気で「目標管理」を正していく必要があります。
この春、期待と希望を持って入社してきた初々しい人材が、数年も経てば、会社を辞めるか、上記のような ”立派” なJTC従業員になってしまうという悲しい現状を一刻も早くなんとかせねばなりません。J

私は、このブログでの情報発信を含め、今の立場でできることを毎日全力でやります!
共感・同意していただける人事パーソンの皆さま、是非情報交換しましょう!
途中で紹介しましたが、目標管理をちゃんと理解したい場合は、以下の書籍をお勧めします。
参考書籍:坪谷邦生 著『図解 目標管理入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2023年)
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