今回の記事は、「この人は他のマネジャーとは違うなぁ」と感じられたマネジャー(Aさん:部長)と会ったときの話です。どんな点に関して“他と違う”と感じかと言いますと・・・。
今日はそんな話です。
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エンゲージメントサーベイのスコアが爆上がり
Aさんとの面談のあとで関係者に聞いたのですが、Aさんが率いる組織(部)は、Aさんが着任して以降、会社として定期的にやっているエンゲージメントサーベイのスコアが大きく良化したそうです。
エンゲージメントサーベイのスコアに対するマネジャー(部長・課長)の影響力があるというデータはあるようですし(※1)、実際にそんな職場をよく見てきていますので、マネジャーの存在・人柄・言動が様々な点において無視できない要素であることを否定することはできません。
私はAさんから色々とお話を伺うことができました。普段どのようなことを考え、日常において何をやっているのか、部下とどのように接しているのかなどを具体的に教えていただきました。

私はこれまで様々な会社のミドルマネジャーに話を聞いてきた経験から、Aさんの話を聞き、「この人はきっと部下からの評判もよく、成果を出せる人だろうな」と直感しました。話しぶりや話の分かりやすさもあるのですが、話の内容がとにかく一般的なマネジャーと全く違います。
どんな点に違いを感じたのか・・・以下の3点です。
- 語る内容は、中期的視点と短期的視点のバランスが半々
- 日常のどんな出来事も中期的なゴールと関連付けて考え、発言されている
- 中期的な視点で部下と接しており、部下に変化・成長することを要請・支援している
- 厳しい経営環境や忙しさを言い訳にしない
- 自分が変わることを厭わない
裏を返せば、世間の多くのマネジャーはこんな感じの印象です。
- 短期的な視点しか持っていない(ビジョンという言葉を使うが、それを実現する気概を感じない。または、ビジョン実現のための戦略がない)
- 「中期的なことをやりたくても忙しいからできない」が鉄板の言い訳
- 他責にする(景気・会社の制度や仕組み・組織・部下が悪い)
恐らくは、Aさんの前任者はこんな感じなのではなかったのでしょうか。

だから、エンゲージメントサーベイの結果がAさんになって爆上がりしたと推察しますが、あながち外れていない気がします。
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思考や発言が短期なマネジャーは組織を暗くするだけ
Aさんが着任される前は、従業員は毎期目の前のことしか考えていなかったでしょうね。なぜなら、当時のマネジャーが目の前のことしか考えていないから。従業員は何とかそれなりの成果を出すが、期が改まると「今期も頑張ろう!」とマネジャーから要請される。毎期その繰り返しだったのでしょうね。

こんな日常がこの先もずっと続くのかと思うと、仕事は全く楽しくないですね。やらされ仕事になる。しかも、環境変化に適応する競争相手に苦戦し、マネジャーはますます目先の業績に追われ、焦燥感を抱き、空回りし、職場の空気感は悪化し、あきらめ感が漂う。

そんなときに着任したのがAさんだったのかもしれません。

Aさんは中期的な視点で思考・行動されていますが、短期業績を決して無視していません。中期的のことを明確に考えているからこそ、短期成果が中期にどんな意味を持っているのかを考えることができ、それを部下にちゃんと伝えています(と、ご自身もおっしゃっていました)。
そして、Aさんは言い訳をしません。そして自責で考えておられます。
一方、こんな言い訳を言うマネジャーが結構います。

状況がコロコロ変わるので中期なんて描けませんよ。描くだけ無駄ですよ

いま業績が厳しいので、目の前の成果創出に追われて、中期の取組みなんてできませんよ
恐らくこういった類いの発言をするマネジャーは、好景気なときにはこんな発言をしますよ、きっと。

いま業績好調なので、何かを変える必要はありませんよ。忙しいですしね!
つまり、こんな発言をするマネジャーは
好景気だろうが、不景気だろうが、思考が短期。そして、組織に変革を起こすことはありません。できません。

残念ながら、それが現実だと思います。
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部長は未来を創る人
環境変化が常態化している現在、こんな思考の人が(課長ならまだしも)部長になろうものなら、組織の中期的な成長・発展はあり得ませんね。変革を促せないわけですから。
このあたりに関して、部長に関する、リクルートワークス研究所の調査(→ 該当するサイトへ)は参考になります。
好景気だろうが、不景気だろうが、忙しかろうが、暇だろうが、部長は未来を創る人です。
そのためには常に中期的視点で思考し、発言し、行動する。これが部長の役割です。これができない人は部長であってはいけませんし、成果も(良くて短期しか)出せませんし、従業員も徐々に離れていくでしょう。
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Aさんとは今後もコミュニケーションを取って、色々と学ばせてもらいたいと思っています。

部長がまず学ぶべきは、1on1ミーティングのテクニックとか、コーチングスキルではありません。組織を元気にしたい、従業員や職場のエンゲージメントを高めたいのであれば、部長自らが中期で事業・組織・人のことを考え、発言・行動することなのではないでしょうか。
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